――ITF Juniorは、勝つだけでなく、「育つためのツアー」へ
2026年1月、ITF(国際テニス連盟)のジュニアツアーが大きく変わります。
この改革は、世界のトップを目指すジュニア選手たちにとって、大きな転換点になります。
これまでのように「負けたら終わり」ではなく、「遠征しても1試合で終わる」ことも少なくなります。
そして、「ランキングがすべて」という時代も、いよいよ終わりを迎えようとしています。
ラウンドロビン方式の導入――「経験の価値」を中心に
最も注目すべき変化は、
J30・J60大会の一部が“リーグ戦+トーナメント”形式になることです。
これまでのITFジュニア大会は、初戦で敗れた時点で終了でした。せっかく海外まで遠征しても、1試合で大会が終わってしまうケースが多くありました。
2026年からは、まず複数のグループに分かれてリーグ戦が行われ、その上位者が決勝トーナメントへ進むラウンドロビン形式になります。
つまり、どんなに早く敗れても最低3試合はプレーできるのです。
この変更は、「経験こそが選手を育てる」というITFの明確な意思を反映しています。
テニスは練習量だけで強くなれるスポーツではありません。試合を重ね、失敗や緊張を経験しながら、自分のプレーを確立していく競技です。
この新制度によって、実戦を通して成長できる環境が整っていくと言えるでしょう。
WTNの台頭――ランキングだけが道ではなくなる
もうひとつの大きな変化は、
WTN(World Tennis Number)の重視です。
これまではITFジュニアランキング上位の選手しか国際大会に出場できませんでしたが、
2026年からはWTNが高い選手にも「特別枠」が与えられるようになります。
WTNとは、国内大会や地域大会を含めた実力を総合的に評価する数値です。
たとえ国際ランキングが低くても、WTNが高ければITF大会に出場できる可能性が出てきます。
つまり、
「世界ランキングに依存しない新しい評価軸」が誕生するのです。
これにより、海外遠征が難しい選手でも、国内大会で結果を出し続けることで国際舞台への扉が開かれます。
地理的・経済的な格差を埋めるための、画期的な仕組みだと言えるでしょう。
地域枠の拡大――16歳以下の選手にもチャンスが広がる
さらに、「16歳以下地域枠」が世界中に拡大されます。
これまではヨーロッパや南米など一部地域に限られていましたが、2026年からはアジア・オセアニアも対象になります。
WTNを基準に、各地域から16歳以下の選手が直接大会に出場できるようになるのです。
これは、地方にいる若い選手にとって大きなチャンスです。
たとえランキングがまだ高くなくても、WTNを上げておけば「地域代表」として国際大会に出場できる可能性があります。
日本のジュニア選手にとっても、確実にプラスとなる制度変更です。
「勝ち」よりも「育ち」へ――新時代のテニス観
今回の改正を通して見えてくるキーワードは、「公平なチャンス」です。
どの地域の選手でも、努力すればチャンスをつかめる。
ITFはそうした「育つための環境づくり」に本格的に舵を切りました。
これからのジュニアテニスでは、単に「勝つ」ことよりも、「試合を通じて成長すること」に価値が置かれます。
WTNの導入やラウンドロビン形式は、そのための“舞台”です。
保護者や指導者も、「結果」だけでなく「経験」をどう積ませるかを考える時代に入りました。
勝敗の裏にある成長こそ、長いキャリアを支える力になります。
日本の選手・保護者が今からできる5つの準備
1.WTNを把握しましょう。
自分のWTNを確認し、どの大会が出場可能かを早めに調べておくことが大切です。
2.国内大会を積極的に活用しましょう。
WTNは国内の大会でも上がります。遠征費をかけずに、実力を示す機会を増やしましょう。
3.大会形式を確認しましょう。
「ラウンドロビン方式」かどうかをエントリー前に必ずチェックしてください。
4.試合対応型の練習に切り替えましょう。
3日間で複数試合をこなすスタイルでは、体力・集中力・リカバリー能力が問われます。
5.地域枠を意識したWTN戦略を立てましょう。
16歳以下の選手は、アジア地域の枠を狙うことが現実的な目標になります。
「勝てなかった日も、育っている」
制度が変わっても、テニスの本質は変わりません。
緊張や敗北も、選手を強くする大切な経験です。
ラウンドロビン制度やWTNの導入によって、そうした経験を積むチャンスが増えることは、ジュニア育成の大きな前進です。
2026年、ジュニアテニスは、「勝つため」だけでなく「育つため」の舞台へと進化します。
この変化をチャンスとして捉え、未来への一歩を踏み出していきましょう。