腰椎の疲労骨折(腰椎分離症など)は青年期アスリート(12〜14歳)に起こりやすいスポーツ障害として知られています。
今回、早稲田大学の研究で、この腰椎の疲労骨折の要因が解明されました。
ポイントはこちらです。
青年期アスリートに起こりやすいスポーツ障害の発症要因
①腰椎の疲労骨折は青年期サッカー選手の約25%に生じている
②腰椎の疲労骨折の原因として、「無症候性の骨髄浮腫」、「腰椎アライメント不良」、「未成熟な腰椎」、「ハムストリングスのタイトネス(筋の硬さ)」が関連することを初めて解明
③腰椎の疲労骨折の原因を意識した予防プログラムを作成することで、青年期のスポーツ選手が自身の身体を意識し、けがを減らすことにつながる
腰椎の疲労骨折の要因は4つ
今回の研究では、腰椎の疲労骨折の発症要因を下記の4つとしました。
- 無症候性の骨髄浮腫を有していること
- 骨成熟ステージのうち、2番目に該当するApophyseal stageであること
- 腰椎前弯に対して仙骨が前傾していること
- ハムストリングスが硬いこと
それぞれを見てみましょう。
無症候性の骨髄浮腫を有している
骨髄浮腫とは、骨のむくみや腫れのこと。
つまり、骨の内部の骨髄部分に炎症が起きて、腫れている状態を指します。
倦怠感や発熱などの症状に表れることがありますが、実際は気づかずに過ごしているケースが多いようです。
骨成熟ステージがApophyseal stageである
子どもの骨は成長期に成長軟骨の中心に骨端核ができ、次第に骨端全体が骨となり、骨幹とつながって大人の骨となります。
その骨の成長段階は,椎体と椎間板の間にある二次骨化核が骨化する(堅くなる)前の「Cartilaginous stage」、骨化したがまだ成長軟骨が残存する「Apophyseal stage」、骨化が完了し椎体と癒合し成長終了した「Epiphyseal stage」の3つの段階で表されます。
その中でも骨が硬くなりきっていない「Apophyseal stage」に発症しやすいということです。
横浜市スポーツ医科学センターリハビリテーション科の塩田 真史さんによるとオスグッドもこの「Apophyseal stage」の時期に起きやすいそうです。
参考資料:Osgood-Schlatter 病の病態と治療 発症から復帰までの現状と今後の課題(日本アスレティックトレーニング学会誌 第 4 巻 第 1 号 29-34(2018))
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsatj/4/1/4_29/_pdf/-char/ja
腰椎前弯に対して仙骨が前傾している
仙骨とは、背骨の一番下にある三角形の形をした骨のこと。
普段から反り腰や猫背でいると仙骨が前方に倒れてしまい、腰椎の疲労骨折の要因になりかねないのです。
ハムストリングスが硬い
太もも後側にある、半腱様筋・半膜様筋・大腿二頭筋の3つの筋肉の総称です。
膝を曲げたり、股関節を後ろに反らしたりなどの時に働きます。
ハムストリングスは骨盤のズレや極度な筋肉の疲労によって、柔軟性が失われていくようです。
要因が分かれば、予防に尽力するのみ
研究を発表した早稲田大学スポーツ科学学術院の筒井 俊春 助教授はこのようにコメントしています。
「子どもをけがから守る」べく、スポーツ医学に携わる者としてこの結果を、成長期アスリート本人だけでなく、取り巻く監督やコーチ、保護者に届けたいです。
要因が分かれば、その予防法を見いだし、積極的に取り組んでいくことが大切です。
予防法についてはまた専門家から話を伺いたいと思います。
研究の全文はこちら▼
『The American Journal of Sports Medicine』(論文名:Risk Factors for Symptomatic Bilateral Lumbar Bone Stress Injury in Adolescent Soccer Players: A Prospective Cohort Study)
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